妄想劇場

2006年7月20日
タイトル:雨、雨、そして、雨

しとしとと降り続く雨。
下町の路地裏。女が軒先の下でしゃがんで雨を見ている。
隣に男がいる。男は壁にもたれて立っている。矢張り、雨を見ながら。
二人、しばし沈黙。
雨のおとだけが、しとしとと鳴る。

男「貴女は何を待って居るのですか」

女「わたくしは此処で、涙が通りすぎるのを只待って居るのです」

遠くの方で、電車が通り過ぎる音がする。
音が鳴り止んだあとも、二人無言。
雨の音だけが鳴る。
カメラ、灰色の空による。
暗転

窓に映る雨。カメラ、部屋の中へ。
小さな畳敷きの部屋。部屋の隅に女が膝を抱えて座っている。
女の横の壁には窓がある。
男はスーツケースに荷物を詰めている。

女「如何して、何もおっしゃってくれないのですか」

男無言。

女「如何して、旅の御支度をなさっているのですか」

男無言。

女、膝を抱えたまま、左手で右手を握りしめる。
窓にあたる雨の音が大きくなる。
カメラ、雨による。
暗転。

しとしとと降り続く雨。
縁側に男と女が居る。
女、雨空を見上げている。

女「今日も雨のち雨ですね。何時になったら止むのでしょう」

男、女に向けていた視線を雨空に向ける。

男「太陽が昇ったらです」

女と男、微笑み合う。
女、雨をさけて置いてあった、花の鉢を手に取る。

女「それでは、わたくしは此処で永遠の赤い花を育てて待って居ります」

カメラ、男と女から、庭へ。庭から雨空へ。
遠くの空に、うす雲の間から月が見える。
カメラ、庭に置かれた鉢植えへ。
雨にうたれて、花びらが一枚、一枚、散る。

雨の音激しくなる。
暗転。

畳の部屋。
女、部屋の隅で、膝を抱えて座っている。
男、スーツケースを持って、玄関へ向かう。
男、ドアノブに手をかける。ゆっくり女の方を振り返る。
女、じっと男をみつめる。

女(心の声)「如何して、何もおっしゃってくれないのですか」

女(心の声)「如何して、そんなお顔で御覧になっているのですか」

女、右手をさらに強くにぎりしめる。
二人、しばらく沈黙。
外では雨の音。

男、ドアの方へ向き直り、ドアを開ける。
雨の音が大きくなる。
男、外へ出る。
ドア閉まる。雨の音は小さくならない。

カメラしばらく女を映す。
女、窓に頭をあずける。
雨の音が大きくなる。
暗転。
しばらく雨の音。
雨の音が一段と大きくなる。
一瞬ホワイトアウト。



妄想キャスティング
 女:椎名林檎
 男:小林賢太郎

妄想音楽
 雨の音、GO!GO!7188、椎名林檎

妄想監督
 マシュマロ

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